生まれながらのスターの素質というものが本当にあることは、なんとなくだが理解していたつもりだった。
その1人が自分だと信じて疑わなかった。そんな自分を今すぐ小一時間とっちめてやりたいくらい恥ずかしくなるような、そんな本物に遂に出会えた。
スーパーと呼ばれる所謂食品スーパーマーケット。主婦にカテゴライズされる女性に大人気の場所。
今日の晩御飯。明日のお弁当。そんな目的を筆頭に幾多の猛者たちが集いし場所スーパー。
そんな戦場のようで、ある意味憩いでもある場所に、偉人の卵と呼べる将来有望な人材を、正に人財を見つけた。
いや、見つけたのではなく、それは必然であり、見るべきして見る。言葉のメロディで言えば飲む前に飲む。そんな感じだ。気にしないでくれ。とにかく問答無用で見てしまう、見入ってしまうそんな方なのだ。
「ママ~!!」
店内に響く声。ドタバタと走っています足音。向かう先は当然呼び名でもあるママこと母親のもとへ。
どうしたのと言わんばかりの振り替えり、子供を待ち受けるママこと母親。
きっと次にくるであろう言葉を悟っている。
僕もまた、察しがついていた。
何故なら偶然にも、彼こと、この叫んだ子供推定5歳が寸前まで見ていた風景を知っているからだ。そう見かけていたのだ。
お菓子のある棚を、チョコのある棚を、食い入るように見ていたのを。
ここまでの情報を与えれば皆さんも容易であろう。「ちゃんちゃらおかしいぜ」とエセ江戸っ子を気取ってるに違いない。特にすすらなくてもいい鼻を掌でこすりあげてることであろう。
だが、それもそのはずである。いや、それこそ必然。もう出来レースと言っても過言ではない。
寸前までお菓子の棚を、チョコのある棚を、これでもかと見ていたわけだ。それで叫んでまで呼ぶということはソレしかないわけだ。
それこそ、ココでまさかの、キッチンハイター買って!なんて叫ぶはずがない。叫んでみやがれってんだすっとこどっこいてなわけだ。
だから当然ココで想像できるのは「お菓子買って」或いは「チョコ買って」だ。見てたんだから欲しくなる。買って欲しくなる。それこそ勝手なわけだ上手いこと言った。言ったよママー!大人なら無視してくれ。
「ママ~」
「お菓子忘れてるよ」
えぇええええ~!!
忘れてるよ?WA・SU・RE・TE・RU・YO?ワスレテルヨ?
何てことだ。どんだけうっかりママのお手伝い気取りなんだ!頭脳的なフェイクなんだ。ママこと母親は慣れているのかピクリともせず、忘れてないよと返している。ただもんじゃない。とんでもねー親子だな。オラワクワクすっぞしねーけど。
「買わなくていいの?」
カワイイ☆子供の特権100%出し切る可愛さ。末恐ろしい。怪物だ。もはや怪物だ。
結局根負けした母親はお菓子の棚まで行った。それでもその子は「これ食べないの?」とまるで、お前の欲しいもの買ってやるぞな彼氏的立ち位置からのトーク術。
一体誰に教わり、誰に似たのか。末恐ろしい。
女性に優しいその子は将来有望ならぬ、優坊。優しい坊やなわけだ。
絶対遊坊だけどな。
ですね。