後輩に誘われ、いろは坂に着いた僕達。お披露目するはずの後輩の車は修理となり、代車のマーチでやって来た。そろそろ帰るその時、なんだかんだいって車好きのRは帰り運転すると言い出した。この選択が波乱を巻き起こすことになるとも知らずに。
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今回は続きとなる。
軽快にマーチは走っていた。なんだかんだいってRは運転がうまい。適度な加速、適度なブレーキング、その車の性能を理解するのが速いのだ。
力強さの中にも優しさを感じさせる。そんなバファリンみたいなドライビングに、僕は益々眠気という侵略者に体を奪われようとしていた。
その時だった…
『チッ…この時間でも居るのかよ』
吐き捨てるように言うRの言葉に意識を呼び戻された僕は、朦朧としながらも、かろうじてRの言葉を待っていた。
チッカチッカチッカチッカ…
次の言葉が来る前にマーチはゆっくり減速し、ハザードを出し左脇に移動した。
どうしたんだ?何をRは?
窓の風景から予測すると、高度的にまだ第1いろは坂に入ってまもない感じなのだが・・・
僕の疑問などお構いなしに、Rは独り言?を発する。
『しゃーねーとはいえ遠目はねーな~、ちと言ってやるか』
チッカチッカチッカチッカ…
ウィーーーーン
窓を開けたのを認識したその時だった。
『んだと!カラゴンかよ!んの野郎!』
(えぇええええ~!!)
ウキョキョキョキョ!!
あんなに優しかったのに!
今ならきっと、付き合う前と後での彼氏の態度が豹変した時の彼女の気持ちが分かる!シンクロ率400%で分かる!だが逃げちゃダメだ!いや逃げれない!逃げることなどできないんだ!
グギャァアアアア
非力なマーチが雄叫びをあげる
ここで説明しよう☆
朝とはいえ、まだ走り屋さん達が居て、ダウンヒルを攻めこんで来たと悟ったRは、邪魔にならないようにと、道を譲ろうとしたのだ。
しかし、いくら邪魔だからとはいえ、マナーとして一般車を煽る以前にハイビームはないだろうと。同じ車好きとして注意せねばと窓を開けたところ、横を抜けていったのは走り屋など程遠い、勘違い野郎の一般ピーポーおっさんだったと。
しかも、カラゴン(トヨタ カローラワゴン)という、商用車に多いステーションワゴンかよと。ライトが眩しくて車種を確認できなかったとはいえ、なんでワゴン車に煽られなければならないのかと。この俺が。この俺様がと。
こんなん出ましたけど←
ちなみにカラゴンは
ぶちギレしたRは絶対聞こえないと分かっていながらも、数々のいてまうぞ系の言葉を発していた。
だが、怒り任せで運転してるわけではない。そこはやっぱりRなわけだ。
乗りなれない車種や、普段とは違うマニュアルではないオートマであろうと、彼の上手さは変わらなかった。ここまでの道のりを運転してきたという少ない経験値も十分に生かされている訳だ。
あれだけ先を走っていたカラゴンが、あっという間に目の前まで来た。それもそのはず、第1いろは坂はコーナーがエグイわけだ。
ズバリこんな感じだ
画像の通り2車線とは言え、第2いろは坂と違ってガッチリ中央線があるわけではなく、狭い箇所もあるわけだ。この道をスピードを出して平然と走るのは相当難しいのだ。
パワーやトルクという性能では若干カラゴンが優っているとはいえ、所詮ステーションワゴンだ。曲がるという性能では確実にマーチの方が上だ。しかも、運転はRだ。追い付いて当然なのだ。
代車のマーチの為、グリップ走行で攻め込むR。基本アウト・イン・アウトなのだが、カラゴンより少しだけブレーキが遅く、そして強く、カラゴンよりアクセルオンが速く、そして長い。その差は歴然なわけだ。
『よくも…の野郎…』
完全にキレている。そんなRを見るのは珍しくもない。いたって普通だ。だが、今回は怒りの理由を理解できただけ、まだまともかもしれない。
しれないが危険なことには変わりない。何をしでかすか分からない。僕は眠気などぶっ飛び、マーチの予測不能な動きに耐えるため、初めてフジヤマに乗った時を彷彿させる腕ピーン、膝ピーンという莫大な力を発生させていた。
そんな Rの怒りに気づいているのか、カラゴンも限界ギリギリな直線での加速でマーチを突き放そうとする。
が、コーナーリングであっという間にマーチに追い付かれ鬼のように煽られている。ひょっとしたらRの叫び声が聞こえてるかもしれない。
「あ…あRさん…」
そういえば居たなと思ってしまうほど、存在感を消し去っていた後輩が声を発した。
きっと高校時代のRを思い出しているのかもしれない。シートベルトを握りしめながら、両足をこれでもかもとピーンと突っ張らせていることからも、尋常じゃない緊張に見舞われていることが分かる。
そんな同乗者2名が足ピーンさせている車内の状況など知ったこっちゃないRは、後ろから追突して押し出すのではないかと思えるくらいカラゴンを煽り出していた。
時だった。
『はいっ!っと』
(え?)
僕の脳内で、謎のRの言葉を理解するための処理が終わる前に、追い討ちをかけるように今度は謎の行動し始める。
『窓開けろ』
そう、冷凍保存されてるかのようなカッチカチに緊張状態の後輩に告げ、マーチはゆっくり減速していった。
えっ?許した?気が済んだと?
思わず声が出そうなほど、僕には意外だったRの行動。とはいえ、危険な状態はまぬがれたはずだ。
はずだった。
はずだと思っていた。
『頑張るな…』
意味不明な発言をするR。すべての窓を開けカーステレオのボリュームを下げた状態のマーチ。減速しながら走るマーチのエンジン音が心地よく聞こえていた。
その時だった…
グッガシュァー
(ん?)
『ッシャーーー!』
(え?え?)
ウキョキョキョキョ
急加速するマーチ、微笑むR、未だ瞬間冷凍中の後輩、訳の分からないS。
一体感のない車内を嘲笑うかのようにマーチのエンジン音が鳴り響いていた。
怒りを抑え、許したと思われたRの奇妙な行動の意味とは。
その行動に翻弄される2人の運命や如何にぃいいいい~!!
次回!ですね。note~!!
種明かし
お前はもう読んでいる(北斗の拳風)
ですね。