小学3年の夏。僕のせいでクラスのみんなが人質になった。
その出来事を思い出すことになった。望んではいないのだけど。
「いや、ちゃんとやってました。」
「やってないから今議題になってんだろ」
「でも・・・」
言い争いというか、言い合いというか、部下と部下がってな状況。
ちょっとした打合せだった。会議までならないそんな打合せ。いや、ただ確認したかったんだ。事実を共有する必要があったんだ。まっソレは良いとして。
するべきことをやったやらないの言い争い。やったと言い張る方とやってないとそれを認めれない方。反する主張。争いとはそういうもんですよね。
第三者として見ればどちらの主張が真実なのか、自分の認識している真実と照らし合わせるわけだ。見定めるわけだ。普通はだ。僕の思う普通だけど。正しいか間違いかを見ようとしてしまうわけだ。
でも、どっちがどうのというより、何が起きたのか、起きていたのか、という事実が知りたいだけなんだ。少なくとも僕は。
だから僕はこう伝えることにしたんだ。
『分かった。お前を信じる』
ただ、これだけでは物分かりの良いというより、何にも考えてない偽善者のようだ。だからこう付け足すんだ。
『だけど、そう思われてしまうような行動や言動が何かあったかもしれないな。誤解を与えてしまったのかもしれないな。だとしたら、そこは気をつけなきゃならないな』
そして反する相手にも伝えるんだ。
『どういうところがそう感じたのかを相手に分かるように伝える方が通じるかもな。相手も考えやすいかもな』
『とにかく状況はわかった。ありがとう』
そうやって振り返りどや顔で歩き出すんだ。たまにつまずいちゃうけど。テヘ♪
この日はもめていた部下達の直属の上司である僕の部下が僕を追ってきた。なぞなぞみたいだけどそういうことなんだ。
「意外でした」
僕に追いつくなり言い放ってきた。意外って君~などと言うわけもなく、その言葉の意味を質問した。何故そう思ったのかを。
その答えは想定できた内容だった。あのもめている内容だが、正直やったと言っていたが、やれてないと思うと。いや実際そうだと。そのことに僕も気づいてたはずだと。分かるはずだと。なのに信じるとか嘘を言うような人だと思わなかったと。そういうことらしい。
嘘って君~
僕は嘘を言ったつもりはないんだ。それこそ、彼だってそうなわけだ。そう思うんだ。そう考えれるように、考えることに、僕は決めたんだ。あの日から。
小学3年の夏。僕のせいでクラスのみんなが人質になった(2回目)
その日は担任の先生が休みで、代わりの先生が帰りのホームルームに来た時だった。
クラスはいくつかの班に分かれていた。その1つの班の班長に僕はなっていた。
班長は帰りのホームルームで、1日を通じ班で何かなかったのか、連絡事項はないのかを発言するのが仕事だった。
それぞれの班長が数字の小さい班から順番に発言していた。
「特にありません」「特にありません」・・・・
当然僕の番になったので同じように答えた。つもりだった。
『特にありませ~ん』
クラス中が大爆笑となった。意味は分からない。僕は普通に言ったはずだった。つもりだった。でも何かがあってそれが面白い事としてクラス中が認識したんだ。今でも意味が分からない。
担任の代わりに来た先生が僕に言ったんだ。
「何ふざけてるんだ!なんでそんなことをしたんだ!言いなさい!」
当然僕は言い返した。『普通に言っただけです。ふざけてません』と。事実なのだからそう答えたんだ。今だって胸張って言える。僕は嘘を付いていない。
だが、その先生には通じなかった。
「理由を言うまで全員帰れません。何故したのか言いなさい」
僕は頭にきていた。何故僕は嘘つき呼ばわりされなければならないのか。僕は悪いことはしていない。僕はだんまりを決めた。小学3年生の僕の抵抗だった。主張だった。僕は正しいのだと。
10分、20分、そして30分。僕は意地でも話す気はなかった。なかったのだけど、クラスの全員はそれを許してくれなかった。
「頼むよ~もう謝ってくれよ~」
「笑わせようと思ってやりましたって言えばいいじゃん」
「頼むよ帰りたいよ~」
1人が言い出した途端、ザワザワと騒ぎ出した。これが集団心理だろう。急速に同調していくわけだ。シンクロしていくわけだ。僕に謝れと。僕が悪いと。
小学3年生の僕にはそれに抵抗できるほどの精神はなかった。
『笑わせようとやりました』
悔しかった。死ぬほど悔しかった。謝りなさいと追い打ちをかけてきたその先生のどや顔を今でも覚えている。コイツを僕は許さないと。
それから月日が経ち、僕は高校生となっていた。
その日はサッカーの試合。スタメンで出ていた僕は、試合中にベンチに近づき交代を志願した。
その試合、僕は尋常じゃないほど走っていた。えげつねー体力を消耗していた。2点差で勝ってもいたし、休ませて欲しいと志願したんだ。監督はすぐ了解してくれ僕は交代した。
ベンチに座り試合を観ていた。そんな僕に先輩が声をかけてきたんだ。何てないことだ。
「いや~S今日走ってたしな。疲れただろう?」
僕の事を思っての言葉だった。だから、だからこそ僕は同調する言葉を返した。
『そうっすね』
何故かベンチは大爆笑した。同時にちょっお前先輩にそれはないだろう的にツッコミを入れらえた。訳が分からなかった。いや、何がそんなに面白いんだと。
僕は自分で分からない言い方をしているようだ。イントネーションか何かが、そこに不適切な言い方を無意識でしているようだ。そうその時気づいた。気が付けた。てことはあの小学の時も。
それから僕は発言する時に注意するようになった。そして、同じようなことがあった場合、そういうつもりはなかったことを伝え謝罪することにした。それを続けていたら、もう同じようなことは起こらなくなった。なったんだ。
そうして僕は、本人の中で嘘を言っていないと思っても、周りがそう捉えれないことがあることを知った。本人の意思とは違った伝わり方があることを知った。そして何よりそれを理解してもらえないことがどれだけ辛いかを知った。知ったんだ。
あの日、僕は嘘をついた。嫌々嘘をついた。嫌な事を認めた。認めさせられた。クラスの全員を救うためにと自分を誤魔化して。でも誰もそう思ってる人など居ない。そう捉えている人など居ない。居るわけがない。そんな美談じゃないんだ。あの日僕は悪ふざけをしてクラス全員を困らせた人。それだけなんだ。調子に乗った悪ガキのエピソードなわけだ。
だから僕は信じようと思った。信じることに決めたんだ。僕と同じ思いをして欲しくないから。
嘘は言ってない。本人はそう思っている。だから信じると。嘘を言っていないことを信じると。ただ、実際言っている内容と異なることが世の中にあると。伝わり方があると。それを理解してあげようと。教えてあげようと。そう決めたんだ。あの出来事から。
『そういうわけでさ、本人は嘘言ってないと思うんだ。だから信じてあげたいんだ』
「なるへそ~」
イラっとした。きっとあの日の先生も先輩もこう思ったのかもしれない。しれないが、僕とは違う。全く違う。
きっとコイツはバカにしている。文字にしても分かる時点で間違いないはずだ。
へそ~って君~
そこは見極めれる自分でありたい
ですね。