久々に髪を短くした。
あの日以来…もう3年、もう少しで4年経つのね…あの少し暑い日から…
某日。
私は6年付き合った彼と別れた。6年って長いけど、その半分以上は
高校に入ってすぐ、彼から告白された。最初は彼の方が私に夢中だった。そんな彼に、ちょっと強引な彼に、笑顔がカワイイ彼に、私も少しづつ、いや、急激にそして確実に夢中になっていった。
高校卒業と同時に彼は街を出た。車で2時間の距離の場所で彼は大物になるって言って何故か工場に勤めた。大物って、不思議な人。私は地元の中小企業の事務として働くことになった。一応制服がカワイイ方だったし、不満はなかった。
毎週末、彼は仕事終わりに私の家に泊まりに来た。彼がお風呂に入っている間に食事の準備を終わらせる。ちょっとした夫婦気分を楽しんでいたんだと思う。それが本当の夫婦じゃないからこそ、その雰囲気に酔っていれたのかもしれない。一緒に住みたいねって彼はよく言ってたけど、結局同棲なんかしなかったし、しようともしてなかった。
「休日出勤なんだ」
もう聞きなれた言葉だった。でもその日だけは、何故かその日だけは…。何でだろう。何で、何で私は、行こうと思ったんだろう。
彼が暮らす街に来るのは3回目くらい。今思えば、私が行こうとするのを
車を停めて歩き出してすぐだった。私が行った事のある場所なんて、数えるくらいしか無いのに。
仕事をしているはずの彼がそこにいた。買い物をしていた。知らないあの子と。
ショッピングモールとかならまだしも、スーパーでなんて。もう相当な関係だって思っちゃうじゃない。洋服じゃなくて野菜買うなんて、間違いないって思っちゃうじゃない。
多分、彼に何か言ってやったと思うんだけど、そこら辺の記憶は曖昧で。でも、言い訳しなかったのだけは覚えてる。
酷いよね。嘘でも弁解して欲しかったのに。何か言って欲しかったのに。だんまりなんて。
ああ、もう気持ちがないんだなって。その子の方がいいんだなって。私のことなんて見ようともしてないんだなって。そのせいなのか、今でも残ってる。深く。痛く。
その後は…
追いかけても来ないのに急いで車に乗って、地元戻ってすぐ美容院に行った。泣きながら短くしたいって伝えて。急に短くしたから似合う洋服持ってなくて、何か
もうどうにでもなれって。
服も…私も…
パキッ…パキッ
えっ?一瞬で2つの謎が飛び込んできた。何の音?てか、ここはどこ?
そしてすぐさまもう1つの謎が…
何で私裸なの?
音の犯人は理解できた。誰かがペットボトルの中の液体を飲んでいる。時折、大きめのため息が聞こえてくる。きっと、私の裸と関係があるのだなと容易に想像できた。
私だってもう子供じゃない。この状況がどういうことなのか理解できる。見知らぬ部屋のベットの上、裸の私、汗をかいた後の背中の感じ。それを否定も隠す気もない。ただ、気になるだけなの。
誰と。私は。
何かの防御なのか私は腕の位置を変え、少しでも私の全てが見えないようにガードした。もちろん不自然じゃないように。ビーチフラッグスのスタートのような姿勢。今思えば、どう考えても不自然でしかなかった。
本当は起きて話をすればいいのかもしれない。でも、今の私にはそんな考えを判断できる冷静さがない。だって、知らない人と、彼以外の人と。彼以外で初めてだったわけだし。
そんな私の初々しさを知られたくなかった。どう考えても、相手も予想外だったはず。何度もため息と無駄に歩き回ってる音がそれを表している。液体を異常に飲み込んでいる行為が物語っている。きっと居酒屋で会ったあの人なんだと思う。まだ、見てないけど、声の感じが似ている気がする。
思い切って顔を上げてみる。暗い部屋。少し開いた扉から光が差し込んでいる。目の前には薄いブルーに光るデジタル時計が見えた。3時32分。
今日は会社休もう。こんな時に会社のことを考えるなんて、私も意外と社会人やってんじゃん。そんな思いで笑みがこぼれた。こんな状況で笑えるとか、ある意味笑える。
フッ・・・
えっ?笑った?一体何故?私が起きているのを見られた?いや、見ていた?見て…いた…?
まさかずっと監視してる?
一気に体中が
軽い鼻歌まで聞こえてきた。何をそんなにご機嫌なの?
どう考えても普通の人間の行動じゃない。考え直せば色々と異常な行動だと思えてきた。見知らぬ女と一夜を過ごす。酔ったとは言え、失敗だったとはいえ、冷静ぶろうとしたり、
何度も部屋を出たり入ったり、てっきり私が起きていないかを確認していたんだと思っていた。
でも、そうじゃなかった?
私が逃げはしないかもあるのだろうけどそれより、映り方が…カメラの位置を調整していた…より見えるように変えていた?ていうかいつから撮っていたわけ?まさか行為の最中も?
変態!?
目的はそれなの?私の体を
何の音?えっ?シャワー?浴びている?てことは今?今なら ?
ベットの脇に畳まれた服の下から下着を抜き取る。行動するには今しかない。行動するにしても裸のままではいられない。夢見る少女でもいられない。だって激しい夜に抱かれたんだからって、ノンノンそれじゃ物足りないとか。いや、物足りないとか以前に、激しかったのすら覚えてないけど。
とにかく今分かってる正解は急がなければならないってこと。それこそ見つかったらすぐ逃げれるようにするしかない。逃げるにしても全裸で逃げるなんて逆に通報されてしまう。いや、この場合通報されてもそれはそれでセーフかもしれない。考えようによっては安全かもしれない。間違いなく保護されるのだから。
いや、保護じゃない、逮捕だよ。どこに深夜か早朝か分からないこんな時間帯に素っ裸で発狂して走っている女がいるというのよ。いたとしたら即逮捕でしょ。取調室で弁解しようと何言っても薬やってる疑惑でしょ。警官全員に裸晒しながら説教でしょ。いやいやそんなのいや!左側の乳首だけ毛が生えてるのバレるじゃないの!処理し忘れたんだから!って関係ないでしょ落ち着いてあたし!
でも、その状態(左の乳毛ボウボウ)で昨日は…
はっ!しかもカメラに!?いやいや!絶対いや!何としても映像データを削除しなくちゃ!
とにかく早く着替えなくちゃ。今更だけど、 何でよりによってスポーツブラにボクサーパンツだったんだろう。どんだけ色気がなかったの私。そこは無駄に謝罪したい気持ちになった。なったが、謝った上にその恥ずかしい色気のない下着姿の私から裸の私、そして乳毛ボウボウの私まで暮らし広がるインスパイア・ザ・ネクストみたいにネットの世界に晒されるなんてたまったもんじゃない。わりと乳輪大きいとか言われたくない。乳輪はきっと各々の好みに決まってる。決まっているかはさて置き、はやく服をきてデーターを消して荷物を持って逃げ…
ブォーーー
えっ?ドライヤー?
何ちょっともう上がってるじゃないの!とにかく着替えて…あっ…
そうだわ。そうすればいいのよ…
探してる探してる。
うまくいったみたいね。私がもう居ないと思えば、間違っても追ってくるようなことはしないはず。それよりも気をつけなければならないのは、私が警察と戻ってくること。そうなったことを想定すれば、何よりもまず証拠隠滅を優先するはず。
そうとなればカメラを外し、データを何かに保存し持ち出すはずよ。その時がチャンス!それを奪って一気にダッシュよ!脱出よ!そのための靴なんだから。隙間から差し込む光に腕時計を当てる。時刻は4時30分を過ぎていた。
諦めて朝食?余裕ねってえっ?ちょっと待って?何で?何で…探してる?えっ?バレた?いやバレてる?バレてる?
そうよ!当たり前じゃない!何やってんの私!だってこの部屋には隠しカメラが設置されてるんだから…だからその映像データが欲しいんだもの
マズイ、完全にバレている。1つ1つ居ない箇所を調べてる。いや、フリをしている。そうよね、それこそ隠し撮りの証拠に繋がってしまうものね。にしても性格悪すぎよ。
そっと腕時計を見る。隙間から差し込む光に当てる。5時30分を過ぎていた。あれから2時間も経っている。どういうつもりなの?私は一体どうなるの?どうしたら
はっ…
居る…間違いなく居る。目の前に、見えてはいないけど目の前に居る。息を潜めて、今目の前に…
出るべきか、このまま…
って夢見てから4年か~。彼氏と別れたからってあんな夢見るなんて欲求不満爆発だったのかも。
でも本当なんだもん。嘘みたいどけど、本当の話なんですもの。
『第2のRira 』②
どうしてもやりたかったのよね←
ですね。
※Rira