ですね。note

思った事を書くノート。そんなブログ。

人間のすべて


扉を開けた瞬間何かが動くのを感じた。


また貴様か…

 


下手に階層があるからなのか、近くに木が多いからなのか、わりと見る光景ではある。実際はめったにないのだけど、印象が強いから、『よく見る』と感じてしまうのかもしれない。


仰向けで寝ている。いや、寝ているなどという優雅なモノじゃない。「ギブギブ」そんなことを言いそうな状態。倒れているが正確かもしれない。


命はあるのは分かる。何度も学んできた。手が開いている時はまだ生きている。手が閉じてナ~ムにならない限り生きているんだ。


僕は扉をゆっくり閉じた。


距離が問題だ。扉を開け外に出た瞬間、狂ったように飛び始め体当たりされるのは目に見えている。何なら僕を交わしながら扉から家の中に入られたりでもしたらと考えると、僕の方が狂いそうだ。ジジジジジジ


そうなんだ。今僕の家の扉のすぐそばにセミが力尽きようと仰向けでいる。でも、僕はそんなセミの最後を見届けているほど余裕はなく、今すぐ出かけたいそういう状態なんだ。


ゆっくりと少しだけ扉を開ける。


ピクリとしたが仰向けのままでいるセミ。まだまだ手が開いている以上油断はならない。しかし何とかしなければならない。このままダッシュで飛び出して踏みつぶしてやろうか。可能だが、靴の裏に感じる物体の厚みや、想像できないような物体が潰れる音を感じたいのか聞きたいのか答えはもちろん一酸化窒素だ(NOね


では、潰すのではなく蹴り飛ばすのはどうだ。インサイドキック。往年の中田ヒデを彷彿させる高速キラーパスレベルで蹴れば彼方に行くはずだ。だが、位置的に角度的にどう考えても、すぐ近くの壁の方向に蹴ってしまう。高速であればあるほど強烈なワンツーのように自分に向かって跳ね返ってきそうだ。しかもその勢いのまま飛び出されたら発狂してしまうかもしれない。危険だ。


僕はまたゆっくりと扉を閉めた。


考え直さなければならない。しかし時間に猶予はない。早く出かけなければならない。そういうリミットのある用事があるんだ。何か棒のようなもので…いやダメだ。結局刺激して飛ばせるだけだ。それで彼方に飛んでいけばいいが、ありとあらゆる方向にタックルをかましながら飛ばれるだけ恐怖だ。扉を閉じたとして、開けた時に次一体どこにいるのかって話だ。より近くになどあってはならないわけだ。


ったく…


だんだんイラついてきた。何故僕はこんなことで行動を制限されなければならいのか。そもそもセミって何だって話だ。暑くなればどこからともなく鳴き喚わめきだし、神風と呼べるような自爆覚悟の特攻をかましてくる。何度も衝突を繰り返し飛び回る姿は正に奇行そのものだ。高齢者のプリウスと同等だ。


いや、まだプリウスの方がマシだ。全てのプリウスが奇行なわけではないからだ。目立つだけで全てではない。だがセミはどうだ。ジジジジ鳴きながらトチ狂って飛び回る。ほぼ全てと言って過言ではない出現率だ。だからと言って僕の行動を制限して良いとはならない。なるわけがない。クソイラついてきた。ぶち(ピー)してやる。ピーしてやるよ。


アレしかない…


僕はゆっくりと扉を開けた。


小さく開けたその隙間から、僕の中の全ての邪悪エキスを解き放つようにシューーという音と共にセミに殺虫剤を噴射した。殺虫剤は殺虫剤でもセミ用なんてあるわけがない。ないから同等の厄介者に使用する殺虫剤だ。そうGことゴキ〇リ用だ。商品名はゴキジェットだ。アイツらをイチコロにするんだ期待していいはずだ。


確実にジェットの霧がセミに噴射されている。ピクピクと反応し手を、無数の手を、動かしだした。いやキメ—から!


内側から外側へ。外側から内側へ。何なら軽く半円を描くように、まるでワックスかける!ワックスとる!そんな名作ベスト・キッドのセリフが聞こえきそうな機敏な動きをしだした。おいおい全然効かねーじゃねーかよ!これは後で知ったのだが、セミ用の殺虫剤はないが、ハチ用の殺虫剤がいいらしい。とは言え、どこの家庭だってハチ用こそ持ってねーから。


とにかく、何かを嫌がるようにセミはベスト・キッドを継続している。マジキメ—。だが、このまま無意味と呼べるほどに動いているということは体力の消耗が早まるということだ。ざまーみろセミ!直接の殺傷能力がなくても、確実に貴様を死に追いやっているんだ。人間を舐めるなよセミ!


とは言え、状況は何も変わっていないと言っていい。確かに命削ってベスト・ギッドをしているのかもしれないが、出掛けれないのに変わりはない。バチクソだりー。


つか、ますますイラついてきた。仮に、仮にセミごときが飛んできたからといって、体当たりしてきたからといって、所詮虫けらごときにこの俺様がやられるわけねーだろ。そうだよ、当たろうがなんだろうが、屁でもねーよ。いや、屁以下とさえ言ちゃうね。何をビビってんだよ。いや自分に腹が立ってきた。よし、もう決めた。攻撃してきたら確実にとどめを刺す。何ならとっ捕まえて握りつぶしても構わない。何故なら俺様は出かけたいからだ。邪魔する奴は何人たりとも許さねー!


心は決まった。僕はゆっくりと扉を開けた。


アヘアへ言いそうなセミの動きを無視して外に出た。一瞬ピクついたが、相変わらずベスト・キッドをしている。すかさず扉に施錠をした直後だった。

 

ブゥウウウウウウウ‼
(!!)


セミが羽を動かしだした。飛び上がろうとするが全く飛び上がれない。飛び上がれないどころか仰向けのままだ。しかも左右のバランスが悪いのかクルクルとその場で回っている。セミのブレイクダンス。滑稽でしかない。このまま巨人族のように踏みつぶしてもいいが、そこまで悪じゃない。息の根が止まるまで、あがいていればいいさ(もっと悪


僕はクルクル回るセミを横目に通路を歩いた。グッパイセミ。そうして僕は出かけることができた。

 

3時間後…

 

最近多いよね…


急な雨。まるで嵐のように風も強くなっていた。天の怒りなのか、だとしたら物申したい。セミを作ったお前のせいだと言いたい。もう少し良い死に方ができるように作ればよかっただろうと。いい気になるなよ神。救いのようなことを言っているが、そもそもがお前が作ったから起きているということを忘れるな。自分のケツぐらい自分で拭けよ。この世に悪が、それこそサタンがいるというのならば、全部お前のせいだからな。正に字のごとく、人のせいにするな!ちゃんとやれ!な!

 


信じられないくらい雨が降り出した…
(暴力反対!)


家の前のセミは雨など気にせず仰向けになっていた。手は閉じている。もしかしたら、この雨の中居場所を探して必死になるよりも、雨の当たらないここで安らかに眠れたことは救いなのかもしれない。


だとしたら、それは僕のおかげだ。僕がある意味救ったわけだ。よく聞け神よ。お前の問題を俺たち人間がなんとかフォローしようとしていることを忘れるな。お前の身勝手で生まれた全ての生命がお前を敬ってるなどと思うなよ。お前など、困った時にお願いするくらいの、使い捨てのような気休めだ。それ以外でお前など不必要だ。出しゃばるんじゃね!いいからこの雨を止めろ!馬鹿の一つ覚えみてーに降らしてんじゃねーよ!ワンパターンなんだよ!クソがっ!

 

 

雷止まらねッス
(助けて下さい!)


こうやって人間としての難しさを僕は日々感じている。

 

天変地異の半分は人間対神のせい


ですね。

人間ごっこ


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