今週のお題「あの人へラブレター」
まさかこんな形で思いを打ち明けることになるとは。
初めて拝見したのは、僕がまだ小学生の時だ。
友達の家が理髪店。そんな理由で毎月そこに散髪に行っていた。
勉強がどうの、誰と誰がどうのと、その友達の親である理容師は行く度に話しかけてくる。
そんな会話に嫌気がさしていたある夏の日、ちょうどあなたを見かけたんだ。
初めて見た。そんな顔をしていると。
「あら前からよ。知らなかったの?」
そう小馬鹿にした言い方で僕を責める友達の親兼理容師のおばさんの声など、まともに聞こえない程、僕は魅了されていた。
その美しい姿勢、所作、クールな眼差し。正に大人だった。
子供の僕すら自分が男だと気づかされる、意識させられてしまう人だった。
子供の僕でもそうであるように、大人のおじさん達は散髪よりも、そっちが目当てではないのかと思えるほど見入っていたのを思い出す。
その日まで知らなかったという事実が、僕の中にある本物の嫉妬という感情を生みだした。
あれからどのくらい経つのだろう。
まさかコンビニで見かけるなんて。
何年ぶり、いや何十年ぶりだろう。僕は一瞬で小学生にタイムスリップした。
ただ、あの頃より汚れた僕は、あなたに触れようと手を・・・。
実際そんなことはできなかった。見て見ぬふりをしてコンビニを出た。いや逃げたんだ。
話すことさえできなかったあの日の僕は、年月と共に大きくそして汚くなっていた。
それが恥ずかしかった。そんな自分を見て欲しくなかった。
でもいいのか?これでいいのか?
もう一度。その気持ちでコンビニに向かった。もういないかもしれない。間に合ってくれ。
あなたはそこに居た。
僕の愛しい人
出典:ゴルゴ13 AN INDUSTRIAL SPY ©小学館 さいとう・たかを(著)/©さいとう・プロ
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ですね。