ただただ…ひたすらに…
某日20:00
思いたったが吉日なんて言うわけでもないけど、散歩がてらコンビニへ買い物に行くことにした。
ただただ…
そういえばコンビニに歩いて行くなんて初めてかもしれない。コンビニまでの距離以上に歩くことはあるけれど、目的がコンビニというのは紛れもなく初めてだと思う。という胸の高ぶりなどなく、ただただコンビニを目指し歩いていた。田舎特有の夜の暗さを感じつつ。
ただただ…
どこからともなくリーマンが前の道の右側から現れた。長袖の白いYシャツに紺のスラックス。かな?田舎の夜は中々色が把握しづらい。
物凄く僕を意識しながら横切っていくリーマン。後を追うように歩く僕。方向が同じなのだから仕方がない。ただただ、女性じゃなくて良かったと思った。
ただただ…
夜の曇り空は不気味でしかない。ひょっとしてどこかに雲が途切れて星が見える箇所があるかもしれない。それこそ月なら顔を出すかもしれない。そんな希望という名の思いで、地球よりも速く回りながら、僕は空を見上げていた。見上げていたんだ。ただただ、ひたすらに。
どこにも何も見えなかった。失恋した。どうやら星にも月にも僕はフラれたようだ。首はおろか心までも、ただただ痛めただけだった。
ただただ…
灰色が空を
「フッ」
思わずにやけてしまった。何故なら必ずやっているのだから。通り過ぎる車が見える度に、自転車がせまってくる度に、歩行者を認識する度に、僕は無意識に手首を回しているんだ。
もうこれは意識しても無駄なレベルなんだ。何があっても止められない。そんな所謂クセなんだ。ある程度手首が温まればというか、準備完了というか、その状態になるまで操り人形のようにしてしまうんだ。ただただ、ひたすらに。
一度、後輩に聞かれたことがある。でも、答える気にはなれなかった。あまりにもくだらなく、恥ずかしい内容だからだ。未だに引きずっているの?そんなことを言われかねないしょうもない理由だからだ。
ただただ…
中学2年の夏になろうとしていたある日。それは一瞬だった。
「ちょっ!タイム!タイム!」
ちょっとした『いざこざ』だった。TとMが揉めてはい喧嘩開始。そんな状態だった。僕はM側応援団みたいな立ち位置に居た。短気なMが勢いよくTの胸ぐらを引き寄せた瞬間
ブチッ
(え?)
「痛だだだだだだだだ‼」
「ちょっ!タイム!タイム!」
Mの手首が折れた。はず。捻挫じゃなかったと思う。何かヒビが入ったとか言ってたはず。そんな記憶←
「殴って手首を痛めるコトもあるし気をつけようぜ」
というアオハルの教訓。実にくだらない。でも、あの音を近くで聞いた影響か、未だに準備運動的に手首を回している。回してきた。いつ何があるか分からないからという無意味な正義のような理由で。
あの日の理由が、僕だけの理由が、ゆっくり積み重なって、今の今まで続けてきた。続けてきたんだ。ただただ、ひたすらに。
ただただ…
あの日想像していなかった未来に僕はいる。はずなのに。まるで動いていなかったかのように、あの日と同じ気持ちでただただ繰り返してきた。来たんだな。
何も考えず、考えようともせず、ただただ、ひたすらに。
きっとこの先の未来も、今日という日を重ねていくんだろうね。相も変わらず手首を回していくんだろうね。魔法にでもかかったように。それこそ呪いにかかったように。
ただただ…
自分では選択できない行為。それがただただかもね。
決してコレ売ってやるよって言葉に対しての、ただただ!と駄々をこねるケチなクソババアの子供みたいな要望ではない。ヨボヨボではあるけども。
無理にでもババアという言葉を使って、ヨボヨボという言葉を使って、悪ぶろうとする行為でもない。
いつから僕はこうなったのかな。いい人でいることをいれることを隠そうとするのかな。知られたくないのかな。知って欲しいのに。言って欲しいのに。
気づいて欲しいのに。
ただただ…
ただただハズイんだろな
ですね。