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夜にも奇妙な物語

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藤岡・・・さんか。


普段歩かない住宅街を歩いていた。知らない道というわけではなく、車で通った事がたぶんあるというくらい。その程度の知っているというのも抵抗があるそんな道。


そんな道だからこそ歩くというのは新鮮だ。何気なく見かけていた家の住人の名前が、家の屋根の形が、家の外灯の明るさが、誰なのか、どんなだったのか、どうなのか、知れるのだから。知ることができるのだから。


ひっそりとする住宅街。時間ははっきり分からないが深夜と呼べる時間なのは間違いない。


だからこそ、じっくりと家々を眺めて居られるのかもしれない。しれないが不審者だ。何を思って深夜と呼べる時間に街を徘徊しているのか奇行としか言い表せないわけだ。


だが、それをしている。しかも気づけば左の膝からが流れている。事故なのか事件なのか。微かな痛みから夢ではないことだけは分かる。


徐々にはじめて歩くこの住宅街に怖さを感じてくる。一体何を僕は。何故ここに僕は。

 

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ここを真っ直ぐ…いや、曲がって…


僕は迷っていた。見たことあるはずの街の中で。迷っているという認識がある以上、目的地があるはずだ。ってことは、僕は一体どこを目指しているんだ?

 

いっ…


痛みを認識したときには、僕はアスファルトに抱きついていた。腕をまわすことのできないハグ。それを人は衝突と呼ぶのかもしれない。しれないが、今の僕をみた人は間違いなく倒れている人と認識するはずだ。


膝のはこれか…。謎のの犯人を突き止めた瞬間でもあった。僕は転んでいたのか…。それが1回ではないことは、いまだに痛む膝が教えてくれていた。

 

何なんだよ…


誰に言うわけもなくこぼれ出た。それは必然と言える。一体僕は何をしているのか。何のために。何故。


今にも雄叫びをあげてしまいそうな、そんな怒りなのか何なのか、自分でも理解できない感情に支配されていた。


痛みのお陰なのか、高ぶる感情のお陰なのか、次第に僕は己を取り戻してきた。舞い戻ったと言っても過言ではない。確かに僕は今までここにいたが、ココには居なかったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

酔っぱらってどこにいるか分からんぴょーーーん‼


まずはスマホを確認する。時刻は深夜2時を過ぎている。眠らない街東京であれば何てことはないのかもしれないが、ココは関東の片田舎。静寂どころか無だ。


しかも、田舎特有の街灯が暗い。いや少ないが正解。暗黒までいかないにしろ暗闇の恐怖は変わらない。大人になって暗闇が怖いなどと思うとは、イヤフォンでバイオハザードを夜通しやってた時くらいなもんだ。トイレに行く時がえげつねーほど怖いんだよね。トイレの扉開けたらもしかしてとかさ。

 

そんな話はどうでも良くて


とにかく、今は家に帰らなければならない。それが目的だとやっと分かった。それができなくて徘徊していたというオマケ付きで。何とも要らないオマケなわけだ。


しかしここはどこなんだ。今どこを歩いているんだ僕は。視界がクリアになり、その情報を冷静に判断できる状態にまできた。だからこその謎であり、問題なのだ。


位置確認。そうか!こんな時のスマホだ。グーグルマップのアプリをタップする。今の僕の位置が青い丸で表示されていた。にしてもどこだ?まるで指の先に納豆でも付いたかのように画面上の地図を広域にする。所謂ピンチアウトってわけだ。


広域になりやっと理解できる。自分の目指すべき家の位置と今いる場所を。何故こんなとこに。とはいえ、そんなことを言ってる場合ではない。いち早く家に帰らなければ。


気づけば膝のはうっすらジーンズに色を付けだしている。何やってんだ僕は。幾多の自問を繰り返しながら家路を急ぐ。文明の機器が静かにサポートしてくれていた。


ここまで来れば…


見覚えのある道までたどり着いた。家までもうすぐだ。長かった。そんな気の緩みのせいか、その後の記憶がない。全く思い出せない。今尚。


そして僕は、その記憶がないことをベッドの上で知ることになる。一瞬夢だったのではと希望を持ったのもつかの間、左膝に猛烈な痛みを感じた。ヒドイかさぶたができている。夢じゃない。夢じゃないんだ。


知らないうちに眠ってしまったってやつだ。しかし、無事帰れたのだから良しとしなければならない。酔っぱらいの失敗談は良くあるが、これで済んだだけマシなのかもしれない。


しれないのだが・・・

 

一度温め冷えきったと思われるコンビニの蕎麦に気づいたのは、次の日の夜だった。


いつ僕がコンビニに行ったのかは未だ謎のままだ…

 

 

 

 

お酒の力は全てを狂わせる。適量で抑えるのが、上手な飲み方ですよね。


そう言えばあの蕎麦。コンビニで買われた蕎麦には間違いないのですが、その買われた時間が、あとで見つけたレシートに残っていたのですがね。


その時間が、徘徊していた時に見たスマホの時間よりほんの少し前の深夜2時頃だったのですが。いえ、その時に僕は持っていませんでしたよ。間違いなく。

 

誰か僕の家に…温めたのは誰?

 

まさか…ね?


ね?

 

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ですね。


※今のところ、盗まれたなどはありません