あるケースとして考えて欲しい。考えて欲しいが現在進行形で発生している現実の話でもあるのだが。
どちら側からの視点で説明するかで、きっと正義は変化する。というより正義ほど曖昧なものはないと思う。
一方が悪と思っていても、その思われている方としてみれば正義なわけだ。逆もしかりだ。
そんな考えを理解した上でこれから説明する内容に接して欲しい。これから説明するのは当然僕側の視点だ。
ただ、僕の会社での話と言うわけではない。この場合の僕側は上司側という意味合いとなる。
恒例ではないが、とある会食でのこと。
実は・・・。とその方の会社での問題を僕に打ち明けてきた。
その方の会社に、もうベテランと言える社員が居るらしい。大学を卒業し入社。勉学の成績も優秀。会社としては戦力として当たり前の補強だったわけだ。
だが、実際はどうも実務がよろしくない。簡単に言うとできないそうだ。単なるミスで済まされないレベルらしい。周りはもちろん、本人すら危険となる可能性があるようなミスをするらしい。
危険なミスとは?と思うかもしれないが、その方の職種は所謂研究系だ。つまり化学実験的な業務らしい。ということはだ、【何かヤバい事やらかしちゃう】というミスなわけだ。
そう言えば、僕も学生時代に何かの実験で同級生がとんでもないミスをして、ちっさい爆発を起こしたことがあった。当然先生は激怒しその同級生を退場させていた。
その時のミスとは、【やっちゃいけないよ】という事をしたからなのだが。当然本人はわざとではないだろうが、事前に間違うなよと説明していたことを見事間違ったというわけなのだ。そんな学生のレベルなど比べ物にならないレベルであれば、尚更危険なことなんだろうと。僕は即理解できた。
当然その方も、このまま作業させるわけにはいかないと、その社員の仕事内容を見直し、これくらいならできるだろう的な内容のモノを与えることにしたらしい。
ここで誤解があるといけないので補足するが、最初は注意で済ましていたらしい。だが、改善どころか悪化していったそうだ。年数を重ねても進歩しない実務の技術。後から入社してくる社員の方が戦力となっていたそうだ。
しかも、その社員。今回相談してきた方よりも年上であり、先輩なわけだ。だが、部下なわけだ。簡単に言ってしまえば、仕事ができないので出世もできないというわけだ。
とにかく、その問題の社員でも【できるであろう内容】を何とか探しやらせていたらしい。
ところがだ。
このことに当の本人は不満があるようで、仕事をさせてもらえないと。パワハラだと。騒いでいるようだ。
本人側からすれば、確かにそうなのかもしれない。一生懸命やっているのにと。確かにミスはあったけど、誰だってミスするだろうし、他の人だってミスしたことあるだろうし、なのに自分だけ不当な扱いだと。仕事をわざとくれないと。いじめだと。パワハラだと。
上司側からすれば、そもそもの基礎すらできていない。いつ大事故になるか分からない。もう任せておけない。とは言え、与えれる仕事がない。今与えてる仕事だって、正直高い給料を払ってまでやらせる仕事ではない。正直パートさんで十分な仕事だ。
こんな状況らしい。組合にもそのパワハラ疑惑が伝わって一時期問題になりかけたようだが、組合側も内容を把握し上司側を正義と認め、何もなかったらしい。
この為、さらに当の本人は不満だらけというわけらしいのだが。
その本人からすればだ・・・
上司がダメだと評価してもらえない
そんなことを考えているかもしれない。そう考えているに違いないと思えるような態度なわけだ。
ただ。そう、ただだ。
本当に失礼なアレなのだが・・・
やる気のあるできない奴が一番厄介だ
と思ってしまう。思って当然だと言いたい。非常に冷たい言い方だが、わざと表現させてもらう。
ただ、このできないという意味は、この仕事に合っていないということだ。違う系列の部署への異動で、つまり職場の異動で解決する場合もあるかもしれない。しれないが解決しない場合もある。
そうなると会社に合っていないとなるのだが・・・
当然その方も同じ考えとなり、職場異動などの話を持ち掛けてみたらしいのだが。それが火に油となり、不当だと。パワハラだと。そんな感じらしい。
何故異動させられなければならないのだと。そういう主張らしい。
『あなたはこの職場に必要な能力に達していない』など言えない。ましてや、『辞めた方が良い』など本人に言えるわけもない。そんな感じらしい。
個人的には言い方次第だが、辞めた方が良いは言っちゃいけないにしても、能力に達していないは上手く言えばいいのではと思うのだが。
だが、このご時世だ。コンプライアンスやら何やらで、どんなハラスメントに該当するかもわからない。それほど、難しい問題だ。そのため現在進行形で困っていると。そういう内容だった。
本来であれば、その人の能力に合った職場があればいいのだが、そもそもその人の能力を把握できていない。はずだ。何が優れているのかを。そして当の本人もだ。自分ができていないことすら把握できていない。自分の能力を理解できていないわけだ。
正直こんな話をされて僕としてはだ
知らねーよだ
(ひど~い)
だが、本当に知らねーよだ。どうせっちゅうのだ。僕がその問題に対して考えるという労力を消費する義務はないわけだ。しかも、こんな美味しいもの食べているのにだ。ちなみにブリしゃぶだ。ポン酒でクイッとだ。
ついでだが、日本酒で冷(ひや)とは常温のことだ。冷たいのは冷酒(れいしゅ)だ。そこを勘違いして店ともめているような客は、バッキバキのボッキボキにして、タイトなジーンズにねじ込むわけはない。あるわけない。戦いもしないし、バ~ディでもない。たまたま店で流れていただけだ。気にするな。
そんな話はどうでも良くて・・・
実は僕は、ココまでもめてはいないが似たようなケースがあった。ただ、大きく違うのは本人だった。
本人も悩んでいた。うまくやれないことに。注意という叱りを受ける度に。
そこで呼んで話してみた。もしかしたら、今の職場に【むいていない】のではないかと。他の職場の方が【あってる】のではないかと。【試しても良い】のではないかと。
本人は納得してくれたように見えた。そこで異動してもらった。そして今現在も働いている。前より笑顔でだ。良かったな僕←
正直このケースは稀かもしれない。レアケースってやつだ。スペルはこうだrare caseだ。調べなくて良かったな。あん?やんのか?謝るぞゴルァ!
とにかくだ。
僕はこの稀な事例を、そうレアケースを話してみた。本人の状況が違うので何ら役に立ちそうもないのだが。やっぱり、何かしらで分からせるしかないのかもという思いで。
その方は少し考えて、もう一度話してみようかと思いますと、ブリを箸で摘みながら言った。
鍋の中へ入れ、かるく左右に揺らす所謂しゃぶしゃぶをし、鍋の中の野菜と共にブリを掴み直しポン酢の入ったお椀に軽く浸し、迎えに行くように口に入れた。
ホクホク数回させ、溶けたと声にならない口パクで表現し、日本酒をクイッとひと口。飲み込んだと同時に勢いよく鼻から息を出した。空になったお猪口に、僕がとっくりを近づける。
あっすみません。そう言って、にやけた笑顔を確認し、お猪口に酒を注ぐ僕。ぐつぐつと鍋が煮だったので、コンロの火を弱める。
「どうすか?」
問いかけてみた。
「この時期が来たか~ですよね」
と返ってきた。ブリしゃぶのことかよと思っていた。
いたらだ。
「で、何の話してましたっけ?」
(・・・・・)
部下の能力を知るよりも、己の能力を知るべきだと思った。
ブリシャブになったのではと思いながら、きっと部下に話さないだろうなと悟った僕は、チェイサーをがぶ飲みして思った。
僕はどんな場所が適しているのだろうか。どんな能力があるのだろうか。
少なくとも、この方よりはお酒の席は適所なのかもしれない。気がする。
適材適所。皆が皆そうなっているわけではないのが現実。
となれば、実は必要なのは適応力なのかもしれない。
気がする。
ですね。