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続々・あの日の真実を・・・

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前回までのあらすじ

僕にはどうしても会いたい人が居た。それは小学時代の同級生。

待ち望んだ再会が実現。遂に聞きたかったことが聞ける。あの決闘のことを。

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今回はその続きであり。完結編となる。

 

 

 

『つか、ちょいちょい出てくるRさんて親友なんですか?』


ハイボールのお代わりを注文する片手間で聞いてくる後輩。本当に聞く気があるのか不思議だった。


とはいえ、確かにRの説明をしていなかったわけで、妥当と言える質問だった。

小・中・高と同じ学校。所謂ガキ大将タイプ。短気なのか良くわからないことでスイッチが入ることが多い。ただ、決して自分からは仕掛けず、何かに対しての抵抗という意味で戦う。そんなちょいカリスマ性を持った奴。


『へ~Sさんが言うからよっぽどなんでしょうねカリスマRさんて』


絶対イジってるだろうと思えるくらい、この後無駄にカリスマという単語を連発する後輩。


何やら自分なりにRを理解したのか、話の続きを催促してきた。本当マイペースな奴だ。

 

 

 


Rが席を立ち5分は経過している。


恐らくわざとだ。そういう奴だあいつは。僕が聞ける雰囲気を作ろうとしてのことだろう。


その行為に甘えてすんなり聞きたいところだが、やはりいざとなると躊躇してしまう。


だが、聞かなきゃならない。どうしても聞かなきゃならないんだ。あの決闘でのことを。


先程からテツオは黙っていた。今思えば、きっと何かを感じていたのかもしれない。僕の雰囲気の異常さに。


「あのよ、覚えてるかアレだけどよ。小学の時の決闘あったよな」


「あぁ~。土手だっけ?Rも居たよな」


「そうそう。それでよ・・・」


遂にこの時が来たんだ。やっと聞ける。あの日ことを。あの日の真実を・・・。

 

 

 

 

「何でオメェー殴ったんだよ‼ぁあっ⁉」


Rの助言で突進したが、やはり対面すると気が引ける。正直そんな感じだった。でもやるしかない。もう引けない。そんなことを考えながら、自分で自分のテンションを上げようとしていた。


「おい!何でだって聞いてんだよ‼」


テツオを威嚇しながら間を詰めていく。テツオは相変わらず黙ってコチラを見ていた。


当時のテツオは身長が高く、完全に僕を見下ろしていた。中々の威圧感がある。またいつ殴ってくるか分からない。もう2度とくらうわけにはいかない。テツオの右手を気にしながら、どんどん間を詰めていく。


「オラーー‼」


先手必勝。一瞬の隙をついて僕はテツオの胸ぐらを掴み引き付けた。前かがみになるテツオ。そのテツオの頭を一気に左脇に挟み込んで締めあげた。所謂ヘッドロックだ。簡単に言えば、ゴマちゃんを左小脇に抱えている少年アシベなわけだ。アシベが僕でゴマちゃんがテツオなのだ。アシベが分からない人は自力で検索してくれ。


背の高いテツオを殴るのは容易ではない。その上一度殴られている。そして僕は殴れていない。見事にかわされている。その経験から自分なりに考えた戦法だった。正直、仕切り直しで殴れるほど、僕の怒りは続いていなかったのだ。

 

 

 

 

「それで?なんだよどうしたんだよ」


催促するようにテツオが聞いてきた。勿体ぶるつもりなどなかった。ただ、どう表現したら良いのかを考えていた。あの決闘で、テツオのとった行動を。


「いや、実はどうしても聞きたくてよ」


「だからなんだよもう~」


「あのよ・・・

 

 

お前なんで無抵抗だったんだ?」


そう、テツオはあの決闘中、一度も抵抗しようとしなかったんだ。

 

 

 


もうどのくらい経つのだろう。辺りは夕日に染まっていた。恐らく2時間以上は経ったと思う。


その間ずーと僕はテツオをヘッドロックしたままウロウロと歩きながら、罵声を浴びせていた。


「おいコラ!お前何とか言えよ!」


「何なんだよ!オメェーよ!」


何も言わないテツオ。完全なる無抵抗だった。それが逆に腹が立った。意を決してまで挑んだ決闘。確かに気はすすまなかったとはいえ、やられたという事実がある。その“カリ”を返すための再挑戦なわけだ。


それがどうだ。全くの戦意消失状態のテツオ。これじゃ、ちっぽけな仕返しみたいな感じなわけだ。バカにされてる感が尋常じゃないわけだ。怒りが増していく僕は、必然的に締める力も増していった。

 

「テメーーー‼」


持てる力を振り絞った。そんな感じだった。ぐんぐん締めていく。相変わらず無言のテツオ。

 

「お前何なんだよ!」


そう言った直後だった。

 

テツオは泣いた。鼻をすすりながら、僕の脇の下で号泣しだした。

 

「Sもう帰ろうぜ」


Rの呼びかけで、僕の最初で最後の決闘は終わった。号泣するテツオを残し僕等は帰った。


決して気持ちのいいものではない決闘。ただでさえそうなのに、余計そう思う内容だった。


それから僕とテツオは話すことはなくなった。小学5年で身長がいっきに6センチ伸びた僕は、テツオと変わらないまでになった。その確認をしたのが、僕の中での最後のテツオの記憶だった。


中学に入りテツオとは同じクラスになることもなく、部活も運動部の僕に対し、テツオは吹奏楽部と、交わることはなかった。その後、僕とRは地元を離れて同じ高校に進学し、テツオはそのまま地元の高校へと進学した。


それ以来なんだ。こうして話をするのは。ずっと気になっていた事を聞けるのは。


何故あの時、テツオは抵抗しなかったのか。僕達に対し何を思っていたのか。聞きたかった。知りたかった。


そしてその答えを今聞けるわけだ。


「何でなんだ?何で抵抗しなかったんだ?」


「うーん・・・

 

 

 


友達だから」


「えっ?」


意外な答えに愕然とした。何だか急に恥ずかしくなった。その答えの内容もそうだが、何を今まで気にしていたのかという自分に対してもだ。


「そうか・・・」


「おう・・・・」


「ハハハハハハハハ・・・」

「ハハハハハハハハ・・・」


僕等は笑った。照れくさくて笑うしかなかった。友達と簡単に言えるテツオを羨ましいと思えた。きっともし僕が逆の立場だったら、絶対に言わないような気がしたからだ。


そんな笑い声を聞いてか、Rが戻ってきた。何かを察したのか、その笑いについて何も聞いてこなかった。


「さて、とりあえず乾杯しますか?」


「何でまたやんだよもう~」


Rのふざけた提案にツッコミながらも、僕達は結局乾杯した。本当の意味での乾杯ができたのかもしれない。

 

 

 


『へ~、つまり無抵抗の意味を聞きたくて会いたかったんですよね?』


一応最後まで聞いていた後輩。飲むのか飲まないのか中途半端にハイボールの入ったジョッキを上下させながら聞いてきた。恐らくというか間違いなく酔っぱらっている。


「まぁ~そういうことだな」


質問には答える。そんなQ&Aのルールに則って答えてはみたが、確実に理解していない感が半端なかった。


そもそも、決闘とかいうネーミングからよくある漫画や映画のような抗争を想像していたかもしれない。だが蓋を開けてみれば所詮小学生。決闘などできるわけもなく、結局罵声メインで終わるわけだ。しかも最終的に友情かよと、アオハルかよと、そう思えるハートフルな雰囲気満載なわけだ。何が聞いてて楽しいんだ。と僕ですら思うわけだ。


しばらくウダウダと独り言のようにつぶやいていた後輩。やっと飲んだのかと忘れかけていたハイボールの存在をアピールするかの如く、勢いよく飲み干してテーブルに置いて言ってきた。


『結局のところ・・・テツオさん・・・

 

 

 


何で泣いたんですか?』
(ソコかよ‼)


ここまで聞いといて結局知りたいのはソコかよと。でも僕自身もそれについて聞いてはいない。聞いてはいないが、もしかしたら悔しかったのではないか。そんな気がしている。


何故こうなったのか、決闘ということになったのか、テツオ自体も想像を絶していたに違いない。きっと彼もまた、戦わないと決めて臨んだ決闘に、そうしなければならなかったことに、悔しかったのではないか。そう思う。


テツオに会ったのはそれが最後だった。今どこで何をしているのか、改めて確認はしていない。Rとも、たまにしか連絡をしていない。僕達の決闘は本当の意味で、あの再会の日に終わったのだ。


久々に思い出した決闘。しかしここで1つ疑問が生まれた。何故後輩は聞きたかったのか。僕にどうしても会いたい人が居るのかを何故知りたかったのか。ある意味当然と思える疑問を後輩に投げかけた。


「ところで、何で聞いてきたんだ?どうしても会いたい人とか、死ぬまでに会いたい人居ないかって?」


『あぁ・・・』


そんなことかと言わんばかりに半笑いの後輩。少しイラっとしたが、その答えを待っていた。


めんどくさそうに、もう入っていないハイボールのジョッキの中の氷が解けた水をひと口飲み、教えてやるよ的な表情で僕に向け言い放った。


『深い意味はないんですけど・・・

 

 

 

 

です。』
(無駄にふくむな‼)


結局、暇つぶし程度だった後輩の思い付きに付き合わされたわけだ。でも、久々に思い出せて個人的にはなんだか良かったと思えた。こんな事でもなければ、思い出さなかったかもしれないからだ。

 

あなたにはどうしても会いたい人は居ますか?


死ぬまでに会いたい人は居ますか?


これを機に考えてみるのも、良いかもしれませんね。


うん。

 

深い意味はないけどね。


ですね。