僕にはどうしても会いたい人が居た。会って聞かなければならいことがあった。
その相手は小学時代の同級生。ひょんなことでの再会のチャンスを得る。やっと会える。そして聞ける。
その思いに隠されたエピソードを前回途中まで書いた
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今回はその続きとなる。
約束の土曜日。約束の約1時間前。
決闘。人生初の決闘。いや、最初で最後であろう。僕は考えていた。
Rも考えているのか、終始無言だった。
戦(いくさ)の前の腹ごしらえという感じで、僕達は昼飯を食べていた。
お互い家に誰も居ない為、用意されていた昼食を持って僕がRの家に行ったというわけだ。
「本当にやるんだよね?」
僕は思い切ってRに確認した。今ですら思い出すだけでどうかと思う。小学4年生が呼び出して決闘とか、どうかしているわけだ。
そんな僕の問いにRも何かを感じているのか、大好きなカレーヌードルをすすりながら、吐き出すように答えた。
「もう戻れねーよ」
返事をせず僕はおにぎりをかじった。今声を出しちゃいけない。出したら泣いてしまいそうな、何とも言えない不安感が僕を支配していた。
大好きなおにぎりが、味気なく感じた。僕達は無言のまま、互いに食べることだけに集中していた。覚悟を決めるように。
「よし、行こうぜ」
Rの掛け声でテツオの家に向け、自転車を走らせた。
「でもよ、あいつ殴ってくるとは思わなかったよな~」
「お前のせいだかんな。俺止めに行っただけなのによ~」
これから始まる決闘を正当化するかのように、僕達はこれまでの経緯を語り合っていた。ブレない為にもそれは必要だったと、今でもそう思っている。
「おい、アレ・・・」
間もなくテツオの家に着く。そんな僕達の目に衝撃の映像が飛び込んできた。
20・・・いや30人は居たと思う。テツオの家の前に、ちょっとした暴走族のようにチャリでたむろっている小学生の集団。今思えば、通報されてもおかしくない光景だった。
「来たぞー!」
誰かの一声で、モーゼの十戎の如く、チャリの群れが割れた。テツオの家の前にチャリを止める僕達に向け、隣のクラスのリーダー格のヒカリ(仮名)くんが声をかけてきた。
「本当にやんの?許してやったら?」
もっともな問いかけに怯むことなく、我らがRはこう言い放った。
「やると思ってっから来たんだろ?邪魔すんだったら帰れよ」
一発で場の空気を変えたR。そんなRを背に僕はテツオの家の玄関に向かう。引き戸タイプの玄関。ゆっくり開けテツオを呼ぶ。
「テツオあ~そぼ」
考えようによってはかなり怖い誘い方ではあるが、その当時はその誘い方が主流だっただけだった。
無言で出てくるテツオの後ろから、婆ちゃんの「仲良くしてね~」の声が寂しく響いていた。それもそうであろう。自宅の前に30人もの小学生が集まっているのだ。普通のことではないと思って当然なのだ。
いつしか、その30人の中に仕切りたがりの上級生(小学6年生)が混じっていた。
「よし、じゃあどこ行く?あそこいいだろ?な?」
仕切りたがりの誘導のまま、僕達は河原へと向かった。途中、再三にわたるRの帰れコールにビビったのか、河原まで来たのは、僕達も合わせ10人くらいだった。
「おい、おせぇーぞ」
「わりぃーわりぃー」
いつもの居酒屋にあのテツオが居た。遂に会えた。この時を僕は待っていたんだ。
「とりあえず乾杯な」
仕切り直しという乾杯を済ませてすぐ、テツオが話しかけてきた。
「変わんねーな」
「いや、お前が変わり過ぎなんだって」
「確かに!ハハハハハハハハハ・・・」
メタボの表記がお似合いなテツオの変わりように、本人含め笑っていた。
仕事の関係でたまたま来たというテツオ。奇跡的にRの会社に来たらしい。そこで盛り上がってこの会となったわけだ。
他愛もない会話。各自が近況報告を済ませたその時、何かを察したのかRが席を立った。今しかない。今しかないんだ。あの事を、僕はどうしても聞かなければいけない。あの決闘のことを。
「よし、どっちからだ?」
「最初やられたのSだから、Sからな」
決闘の順番は、本人の意思を無視して決まった。僕の後にR。どう考えても後の方が有利ではないのか、そんな事を考えていた。
「よし!じゃあ始め!」
どや顔の仕切りたがりの合図で決闘開始となった。とはいえ、経験のない決闘を、はいどうぞで始めれるわけもなく、しばしの沈黙が続いた。
小学4年で決闘。どう考えても想像できるわけはない。殴り合うなんてTVか漫画の特別な世界だという認識しかなかった。せめて悪者と戦うヒーローレベルではないと無理だろう。そんな考えが僕を支配していた。
その時だった。
「殴るのは許せねーよな」
迷いの中にいる僕を救うようにRが言い放った。この一声で、僕はスイッチが入った。
「テメェーーー!!」
『えっ?マジでやったんッスか決闘!?』
焼き鳥を頬張りながら驚いたという顔を僕に向ける後輩。ご飯行きましょうなどと誘ってきたと思えば、そう言えばと思い出したのか、この間の続きをと要求してきたわけだ。後輩なりに気を遣っていたのかもしれない。
「そうだけど、お前聞きたいの本当に?」
そもそも武勇伝とは違うと思うが、何やら苦手な雰囲気だったので、前回の事もあり確認する必要があったのだ。
これでまた、やっぱいいッスわとか言われた時には、どこかの民族じゃないかと思えるくらい、後輩の顔面にこれでもかと怒り任せに串を刺しまくりそうな気がしてならない。そんな、かっぱえびせん心理が働いて仕方ないのだ。やめられない止まらないってことだ。恥ずかしいから次からは察して欲しい。
とにかくだ、本当に邪魔せず聞くというのならば言おうじゃないかと。その為の最終確認が必要なのだ。
『いや、聞きますよ。その為に来たんですから』
いつになくやる気の後輩に少し引いてしまった。
「わかった。つかどこまで話したっけ?」
そう内容を確認した僕。
いよいよ動き出した決闘。その決闘に秘められた謎とは?明かされる聞きたいことの全貌。
このあとすべての謎が解ける。
また今度。
(書かないんかーーーい)
ですね。