少し前に・・・
「いろは坂まだ少し早かったみたいです」
そうアホ面のような笑顔で会社の女性社員に言われた。言っとくが褒めている。
紅葉と言えばというほどではないが有名な場所だ。今はどうなのか分からないが、昔と呼べる頃は、違う意味でも有名な場所だった。
上り、下りとそれぞれ専用の2車線。当然だが対向車は来ない。コーナーも多く走るのは大変な場所だ。だからこそだろう。当時のマンガの影響もあったであろうが、その漫画の方が影響を受けていたのではとさえ思えるそんな時代があった。
そうあった。確かに、間違いなく。そして思い出した。あの出来事を。
当時、同じ高校の後輩が近くに居た。近くと言っても車で高速を使う距離だ。そんな後輩から連絡がきた。
「いろは坂付き合って下さいよ」
当時の流行りに僕達はのっかっていた。そんな先輩風を吹かせていた僕達、そうRと僕に車を見せたいというのが後輩の一番の目的だった。そして、尚且つ走らせる為にいろは坂へという口実をつくったわけだ。
Rは小中高と同級生。彼とのエピソードが気になる方は後でも読んで頂けると幸いです。
なんやかんやで当日。
えっ!?
「ちょっ・・・」
そんな驚きを言葉へと変換する前に、Rの笑い声と共に言葉が響いた。
『ウケんだろ?』
Rの言葉の理由。それは野郎2人で素敵なデートcarでお馴染みのコンパクトcarの日産マーチに乗って現れたからだ。
マーチと言っても当然当時でも中古のこんな形のだ
出典:オトオク 中古相場 日産マーチ1.3Aシャープ otooku.com
Rの家に寄ってから僕の家へ。そんな、後輩プレゼンツ「走りのいろは坂ツアー」のスケジュール通り待っていた僕には、あまりに衝撃的な映像だった。
そもそもこの後輩は中古で買った180SX(ワンエイティ)をシルエイティに改造したので見せたいと言うのが主な目的だったのだ。
ゴホン・・・説明しよう☆
シルエイティとは、日産の180SXというスポーツcarのボディに、これまた日産のシルビアというスポーツcarの顔面(フロント部分)を移植(顔面スワップ)した通称ニコイチ車(2個を1個にした車)と言われた当時流行った改造なのだ。
ちなみに、人気の為、後に、この改造した状態つまりシルエイティが新車で販売されたのだ。
同様に、トヨタのスープラのボディにトヨタのソアラの顔面を移植したソープラなるものまで出現した。
これらは昭和後期から平成初期の諸先輩方の試行錯誤して生み出された素晴らしい遺産なのだ。時代の象徴なのだ。
ちなみにシルエイティはこれだ
出典:Amazon 京商 ASC MA-020S 日産 シルエイティ ブルー ラジコン用パーツ MZP434BL
そんなレジェンドなものを受け継いだという新たな歴史的1ページとなるこの日。そんな諸先輩方を愚弄するかのように、可愛らしいマーチでやってきたわけだ。驚かずにいられるかってな話だ。
「すんませーーん」
アニメかと思う程に申し訳なさを顔面で表現する後輩。マーチで来た理由も可哀そうな内容だった。
シルエイティ完成に伴いエンジンの載せ替えを実行した後輩。と言っても同じエンジンなので特に問題はないはずなのだが、そのエンジンは中古エンジン。だいたい5万くらいで買える品物だ。そもそものエンジンの調子が悪い為買ったわけだが当たり外れがあるのも事実。その外れだったというわけだ。
そこで急遽、オーバーホールすることになり、この「走りのいろは坂ツアー」には代車であるマーチで登場というわけなのだ。
だったら中止でいいじゃないのか。そう思うのは必然だが、せっかくのなのでという無駄にもったいない感性でやってきた後輩。
そんな思いでやって来た決断を全否定するかのように、最初に会ったRに、シル・・、マーティーー‼と5分以上爆笑されたらしい。後輩には申し訳ないが、にやけてしまうほど目に浮かぶわけだ。
とにもかくにも、始まりから不安満載の中、ツアー予定地のいろは坂へ向かった。
所要時間は2~3時間だったと思う。もちろん高速も使用してだ。上りは第2いろは坂と呼ばれている中々の勾配のあるキツイ坂だ。
当然運転は後輩。正直僕とRは終始寝ていた。というのも到着したのは午前7時。言うなれば早朝だ。つまり、馬鹿笑いも、アニメのような申し訳ない顔も、午前4時台に行われていたわけだ。そりゃhighにはなるでしょって話。その後眠くなるでょって話。
到着したのは休憩所。明智平展望台というらしい。季節だけでものところにこの早朝、当然寒い。アホみたいに寒い。それでも数名駐車場に居た。物好きもいるもんだと悪態をついていた僕達も、紛れもなくその仲間なわけだ。
そろそろ帰ろうかと車内に戻る僕達。するとRがマーチでダウンヒルして帰るかと悪ふざけが始まった。要は下り坂なわけなのだが。
『よし、はよ乗れよ行くぞ』
異常にノリノリなRに僕と後輩は不安を感じていた。助手席に後輩、後ろに僕が乗った。
『さて、いっちょ行きますか』
ウキョキョキョキョ・・・・
苦しそうなマーチのホイルスピンと共に僕達は下りと言われる第1いろは坂を目指し走り出した。
途中の中尊寺湖など目もくれず下りを目指して走るマーチ。妙なテンションのR、ひきつる後輩、まだ眠い僕。
この悪ふざけがこの後、大きな問題を巻き起こすことになろうとは、まだ誰も知る由もなかった。
ドライバーズhighと化したRの横で、リラックスできない後輩。そんな二人を知ってか知らずかSは眠りに落ちかけようとしていた。
マーチへと忍び寄る恐怖!止められないRの怒り!
狩人と化したRの思惑に明日はあるのくぅわぁあああ~‼
次回!ですね。note~!!
追手の心構え
乱世のマーチは俺が守る(北斗の拳風)
ですね。